Monday, December 17, 2012

引用|生活の知恵~西原理恵子『生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント』より

西原理恵子
『生きる悪知恵
正しくないけど役に立つ60のヒント』

ようするに、せっかく保険かけてたのに、いざ保険金が下りたら「いりません」っていってるみたいなもん。「なんで?」って聞いたら、「オレは男だから」って、顔洗って出直してこい! 働く嫁ほど、この世でありがたいものはないんだから。
西原氏と言うと、マージャンや旅行だけでなく、元旦那さんの看取りを書いたエッセイ漫画があったりと、人生の猛者のようなイメージがある。

 そんな氏の新刊は一問一答形式の人生相談である。人生の猛者なので、一つ一つの回答の切れがよい。その一つに、働いている奥さんが失業した旦那に家事をやれと言うのは如何?との質問の答えがあった。

 生活の柱が何本もあるに越したことはない。高度成長期、会社が疑似共同体モデルで動いていた時であっても、旦那さんが過労死してしまった家庭というのは、お世辞にも「守られている」とは言い難かった。今でも多く農家や自営業は共働きが前提であるし、主婦が行っていた「家政」だって以前は生活上で欠いてはならない仕事であった。「生活上の必要」で役割分担が行われていたのであって、男の沽券は関係ない。

 現在、生活に必要なのだから、奥さんも稼いでくれればこれほどありがたいことはない。

 ・・・と、結婚してから分かりました。

参考リンク: 西原理恵子 『生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント』 文芸春秋 2012

Wednesday, December 5, 2012

日々|師走とKoboとKindleと

■ 師走の風景

 「あー、もう11月ですか。今年も早かったですね。」と、職場で話したのは昨日ではなかったか・・・。気がつくと12月。一体、お前の霜月はなんだったのだと、天に嘲笑われるような気持である。このままでは、ふと気が付いたら皺くちゃになって棺桶の中にいそうで落ち着かない。

やり残したことがたくさんあり、不義理をしている方々がたくさんおり、携わる事業が下半期突如として不調に陥りあわただしく駆け回る。心残りな気持ちが足を急がせる。師(師は僧侶だそうだ)ですら走るのなら、自分は全力疾走しなければ間に合わない。

年の瀬まであと少し。さぁ、今年もがんばろう・・・orz。


■ 楽天 KoboとAmazon Kindle

 電子書籍端末 楽天 Koboの立ち上げを注視していた。一日の長があるAmazon Kindleにどう挑むのか、そんな関心を持っていた。

 実績や期待値で勝るKindleより「早く」、先行する他のライバルより「安く」、「豊富な品ぞろえ」でマーケットを制するKoboの戦略は、ガチンコ勝負型の挑戦者として正統派であった。対してKindleは7月より足かけ4か月も「すぐ発売する」とアナウンスし続け、ユーザーの「待ち」を誘発する「期待値の高い製品」ならではの作戦を実施する。Amazonもなかなか黒い・・・。

 結局、Koboのスタートは散々だった。Amazonより「早く」、他のライバルより「ぶっちぎりで安く」は実現した。しかし、問題はその先である。

  • 初期設定トラブルが発生
  • クレームレビューは「編集」され、口コミが提灯記事化
  • 社長のフォローコメントにユーザーが激怒して炎上
  • 書籍点数が先行他社より少なく、年末までに20万タイトルを約束するが、タイトル水増しが発覚し消費者庁から指導
  • 楽天運営の他の電子書籍ストアを終了した際、Koboへの移行特典をつけたが、他のマイナス面が強調され続ける
  • 楽天カードのプレミアム会員に突如Koboを無償提供。その端末がヤフオクに大量出品され値崩れが発生し、不人気感が蔓延

 「豊富な品ぞろえ」がうまくいかず、クレーム対応にも失敗。以前の電子書籍ストアの店じまいは、アフターフォローしたのにタイミングが悪く不評ぷんぷん。挙句の果てに、自らの作戦でKoboが値崩れを起こし、購入者に不満が蓄積。事業そのものの信頼を早々に失い、返ってKindleへの期待感を高める結果となった。

 これほど凄まじい自爆も近年珍しい。

 一方、Kindleは敵失を横目に準備万端でサービスを開始。洋書が「日本プレミアム価格」だった点に英語本ユーザーががっかりした点を除けば、商品点数はそこそこ、端末価格はKoboとほぼ同等で、一度買った本はタブレットやスマートフォンで読める環境を初めから実現している。さらに通常の書籍販売ページに「Kindle化リクエスト」の項目をつけるキメの細かさ。横綱相撲を地で行く展開となった。

 さて、このKoboのスタートアップ炎上で特に感じるのは次の2点。

  • 失敗シナリオの準備不足
  • 組織的実力を上回る戦略の実施

トラブル時の備えもないままロケットを飛ばしたら、途中で分解して阿鼻叫喚といった状態である。自己の実力で実行できる戦略を見極める必要があったし、うまくいかなかった時を考えておけば、新製品を「いきなり無料で配る」こともなかっただろう。

 また、書籍点数の水増しが起こった原因として、

  • 事業の意思決定者とサービス現場までの距離の遠さ
  • 経営陣の目標設定ミス

が想像される。「頑張ってできる」と「無茶」の境目を悠々と飛び越えてしまうほど、組織内部の情報が断絶し、意思決定を誤ったのではないか。そして、タイトル数の水増しはそのしわ寄せが現場に行った結果ではないか。

 このような事態を修正するには、経営力と現場視点を兼ね備えた人材に権限を委譲し、事業の意思決定レベルをサービス提供現場や開発現場に近付けることが必要だ。意思決定者の目線が顧客に近付けば、経営上の目標も適切な位置に落ち着くはずである。Kindleのユーザー目線の徹底具合を見れば、Amazonの意思決定者はサービスの最前線にいると考えられる。

 今後、それぞれの電子書籍端末やストアがどのような経緯を辿るのかは分からないが、Koboの激しすぎる失敗スタートアップは勉強になる点が多かった。経営陣の強気を横目に、楽天の現場は矛盾や無理は承知の絶望的戦いを繰り広げたのではないかと思われる。楽天自体は強力なポイント還元やAmazonにはない事業展開の広さなど「強み」が多いので、今後のKobo事業を悲観的に見る必要はないが、成功するには組織としてどれだけ変われるかが鍵となるだろう。

Sunday, December 2, 2012

書評|鈴木健介『カッコ悪く起業した人が成功する』 光文社 2007

鈴木健介
『カッコ悪く起業した人が成功する』
 鈴木健介氏はレコード会社のプロデューサーなどを経て貿易会社を興し、順調に業績を伸ばすものの2002年のアジア通貨危機で倒産して自己破産。その後、再起を図った企業家である。

 本書は起業や経営上のポイントを筆者の成功と失敗の両体験から簡潔にまとめられている。起業に関する本は数多あるが、「失敗の体験」がまとめられ本は滅多に見ない。一つは、この手の本は税理士や会計士が書いたものが多いこと、また、一度「失敗」した経営者はそもそも本を書く機会がないということがあるだろう。その意味で貴重である。

 本書で書かれる「やってはいけないポイント」はそのまま起業する人が陥りやすいつまづきポイントと考えてよいだろう。 たとえば、起業をしようとする人は、成功するために成功する方法を考える。そのため、事業計画は「バラ色」になりがちだが、資金の流れを中心に計画がうまくいかないシナリオも作るべきだと著者は説く。また、「求められている商品=客がいる商品=お客がいる」状態でスタートすることの重要性を理解することは、安定したスタートアップのために役立つだろう。

 著者の体験から得た教訓は、深追いを避ける撤退の見極めや、Think big, act small.志向や「マーケットのあるところで勝負」といった理にかなった話につながる。個人事業の開始や、会社設立のHow to本も大事だが、こうした貴重な「失敗」から多くを学んでおくことはスタートアップの助けになるだろう。

参考リンク: 鈴木健介 『カッコ悪く起業した人が成功する』 光文社 2007

評価:★★☆ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:失敗しないことや失敗を致命傷にしないためにには、失敗を学ぶべきとはこのこと。

Wednesday, October 24, 2012

書評|龍 應台 著・天野 健太郎 訳 『台湾海峡一九四九』 白水社 2012

龍 應台
『台湾海峡一九四九』
 本書は中国国民党政府が共産党との内戦に敗れ、中国本土から台湾や香港へ去らねばならなかった人々の漂泊の歴史を、膨大な聞き取り調査から描いたオムニバス形式の文学作品である。

 著者は国民党と一緒に台湾へ逃れてきた人々の視点を基本に置きながら、それぞれの個人史を作品として編んでいく。ある人は国民党に軍人としてさらわれた揚句に台湾に逃げざるを得なくなる。ある人は日本軍や共産党を相手に中国各地を「国」のために転戦した揚句に、国家もろともが吹き飛んでしまった。このように、本書では中国内戦に敗れた側の人々を「傷を抱えた人々」として描いていることが特色である。また、日本軍人として前線に送られた台湾人、日本の戦争捕虜となったアメリカ人、ニューギニアの奥地で果てた日本人の話なども収録されている。

 本書の美点は、民族の視点でなく、巨大な歴史のうねりに翻弄された個々人の複雑な感情を、「結論づくでまとめることなく」作品化していることではないだろうか。もちろん触れていない歴史的な事件もある。しかし、歴史の断片を「ありのままに見る仕事」は台湾だけでなく日本を含んだこの海峡周辺の人々の複雑な事実を掛け値なしで書き出してくれる。


参考リンク:龍 應台 著・天野 健太郎 訳 『台湾海峡一九四九』 白水社 2012

評価:★★★ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)

寸評になっていない寸評:

 義務教育で教わった日本の近現代史を思い起こせば、1945年に敗戦があり、1950-53年の朝鮮戦争特需を経て高度成長が起こり「今に至る」で終わっていた。「今に至る」がバブルの終焉した時期であったのは皮肉であったが・・・。

 一方、近隣地域では1945年の日本敗戦は復興の起点ではなく、混乱の起源である。朝鮮は戦争によって南北に分断され、中国本土は国民党と共産党の内戦を経て、1960年代後半から70年代には文化大革命で大量の餓死者をだした。台湾は日本統治から中国国民党統治の時代となり、本土出身の支配者と台湾人の流血を伴う軋轢が続いた。このような歴史は、一般的な教育機会では教えられない。

 しかし、この複雑性を考えることなしに日本とアジア諸国の関係を理解することはできない。少なくとも各界の実務者は、近隣の人々のもつ経験が複雑であることくらいは基礎知識として叩き込んでおくべきだろう。

Sunday, October 21, 2012

日々|スイッチを押すのは誰なのか

小湊鉄道にしびれる。
■ やる気スイッチ

  「やる気スイッチが入らない」と一言残して電車に乗る。

 目的地はない。人ごみに出るのは嫌だし、さりとて誰もいない駅で降りるのもなにか違う気がする。

 車窓から海の眺めを楽しむより他はない。

 ぼんやり景色を眺めながらウトウトすると、見えない誰かがスイッチを押してくれたらしく、読書を開始する。カバンに重い書籍を入れているのはハッタリではない。1カ月の間の2日間くらいは・・・。

 読書と言えば、学生時代には池袋の皇琲亭で800円の珈琲をすすって本を読んだり論文を書いていた。今、ドトールにて200円のアメリカン珈琲を所望すれば2時間粘れる。

 「下部構造(経済)が上部構造(自分の社会的行動)を規定するんです」といった髭の大将の言葉は至言である。

 結婚して自由に使えるお金が減った話・・・ではなくて、暮らしがどんどんシンプルになっている話である。

 決して、相模湾にむなしくこだまする何かではない。


■ 朋遠方より来る

 遠方の友人の来訪がある。

 あの人には勝てない的な何かを持つ御仁で、生活資材どころかエロ本まで拾い物であった彼の生活力には畏敬を抱くより他はない。学生時代の話だけれども・・。

 そんな友人も、娘もできて、四国の大学教員である。

 物理学者 長岡半太郎は「何々になりたい者は多いが、何々をしようという者は少ない」と言った。御仁のように友人連中は後者が多い。仕事だと前者をよく見かける。が、別にどちらでもいいのである。

 なにより、「やる気スイッチ」とか言っている自分はなんにもしていない。

Saturday, October 20, 2012

書評|大泉啓一郎 『老いていくアジア-繁栄の構図が変わるとき』 中央公論新社 2007

大泉啓一郎
『老いてゆくアジア
―繁栄の構図が変わるとき』
 最近100年間、多産少死という状況が発生したことは特筆すべきことである。それまでは多産多死が一般的で、年齢を重ねるほど生き残る人数は少なかった。医療や保健衛生が進歩し普及した結果、生まれた人間の多くが死ぬことがなくなり、一時的に膨大な集団が現れた。日本で言えば、第二次世界大戦の手前から団塊世代に当たる層がその集団に当たる。社会的負担を要する高齢者が少ない状況で、圧倒的多数の若い労働力を上手く活用できれば、継続的な経済成長が可能となる。その力を活かすには、インフラ、教育水準、社会福祉政策などが適切に実施される必要があるが、アジア諸国の高度成長の背景には「働き、消費する人口」が圧倒的多数を占めていた状況があった。

 本書はそのような「人口の動き」からアジア経済の今後を探る。そして、タイトルに示された通り、アジア諸国は多産少死から少子高齢化へと移行する中で高い経済成長の時代が終焉し、膨大な高齢者の医療と生活をいかに保障するかという問題への対処に迫られることが指摘される。

 しかし、少子高齢化の状況が今後生じるのは同じでも、日韓台のように先進国レベルの経済力で高齢化に入る国もあれば、中国、タイなどのように中進国水準で高齢化に入る国もある。それぞれの経済力や社会環境に見合った内容で、膨大な高齢者をいかに養うかを真剣に考える時代に来ている。

 いずれの国も、国家が全てを養うことは不可能で、地域レベルで住民自身が課題を解決していく必要がある。本書は人口と経済の関係から始まり、国家的福祉の限界と対応策まで幅広く説いている。また、人口面を知ればそれぞれの国の成長の限界も見えてくる。経済的な勢いは国際社会における「力」の一つである。そういった意味でも価値ある一冊だ。


参考リンク:大泉啓一郎 『老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき』 中央公論新社 2007

評価:★★★ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:人口的な側面から考えると、現代の社会環境の変化が非常に理解しやすい。
    頭に入れておいて損はない良著。一般向けとしてはやや学術的匂いあり。

Wednesday, October 17, 2012

書評|牧野知弘 『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』 祥伝社 2012

牧野 知弘
『なぜビジネスホテルは、
一泊四千円でやっていけるのか』


 本書は解説本のようなタイトルだが、内容はホテル業界でコンサルティングを営む著者のエッセイである。宿泊事情の変遷や、困ったお客様の生態、楽天トラベルなどネット系予約サイトの登場による競争環境の変化などがやわらかいタッチで描かれており、経営的な話は後半に若干といったところ。

 1990年代に40万室であったホテル業の客室数は80万室へと倍増した。そのほとんどがビジネスホテルである一方、高級ホテルも外資系の参入で多様化している。 新書全体を通した筋があるわけではないが、高級ホテルがちょっと贅沢しに行くような気軽な場所となったり、ビジネスホテルが仕事や旅行の一コマになったりと、気付かないところでダイナミックに変化していた業界だったことに驚く。

 また、日本の競争の激しさが結果的に世界の一流ホテルを格安で利用できるようにしてしまったのも、この国のサービスマインドを考えると納得せざるを得ない。 贅沢の象徴であったり、清潔簡便な寝床であったり、様々なレベルでサービスの工夫が繰り返されるホテル業。業界の奥の深さと面白さがわかる一冊。

参考リンク:牧野 知弘『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』祥伝社 2012

評価:★★☆ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:「ホテルの仕事が好きと」いう著者の心意気が伝わる一冊。

Sunday, October 14, 2012

日々|輪行にて

夏の空もラスト 上総湊
9月初旬、久里浜経由で千葉に渡り、養老渓谷まで自転車で走る。60kmくらい。養老渓谷の温泉はアルカリ性で黒い。すべすべというかヌルヌルになるが気持ちよかった。


先週は長野 佐久から十石峠を越えて群馬 上野村まで出る。仲間のマシントラブルで秩父に到達しなかったが、秋の峠も気持ちがいい。熊が出るってはなしもあるけれども。

ビールと温泉入るために、自転車やったり走ったりしてるんじゃないかと思う昨今。
これで国道です! 十石峠

 

Tuesday, August 28, 2012

日々|PSY - 江南スタイル Gangnam Style



■ いまさら、まさかの韓流。

 その昔、李博士(イ・パクサ)という人が一瞬ブームになった。ポンチャックという不思議な二拍子の音楽に、どの曲にも時折はいるプルゥゥヒャァァァという雄叫びに痺れたことがある。どこかのWebページに、カシオトーン一つあればどこでもポンチャックできるチープさが魅力と解説されており、ますます痺れた。ドラムもプリセットのものでOKなので安価である。さらに、コックローチのCMにも出ていたことをYoutubeで後から知った。

 そんな李博士を思い起こさせてくれたのが、韓国のラッパーPSYのGangnam Style。ここ数日、頭が離れない。ポンチャックの不思議な流れを組んだおもしろ音楽と勝手に認定。

Sunday, August 26, 2012

引用|本業の意味~藤沢武夫 『経営に終わりはない』

藤沢武夫
『経営に終わりはない』

 ところが、ある特定の一人、二人が為替をいじって、五千万とか一億円儲けたとします。すると、営々と働いて三千万円の利益しか上げられない多くの人たちは、為替の大もうけに決していい感じは持たないだろうと思います。 
 物をつくる会社に働いている物をつくる人たちは、自分たちの働きが、あるひとつの知恵による稼ぎよりも劣ったものでしかないと思ったときに、寂しさを感じて、情熱を失ってしまうだろうと思う。ホンダは物をつくる会社なのです。

 ですから、どんな儲かる話があっても、その話には乗らない。儲けるならみんなの働きで儲けるんだということを、ホンダの金科玉条にした。

(藤沢武夫 『経営に終わりはない』 1998 文芸春秋社 初出典 1986 ネスコ刊)

 ホンダは本田宗一郎氏が開発を、藤沢武夫氏が経営を担当していた。ソニーも井深大氏が開発を、盛田昭夫氏が経営を担当し、双方共に経営の好事例として種々取り上げられている。しかし、この二つの会社の行く末には違いが生じている。

 ソニーグループの利益の多くは、物作りではなく金融子会社が稼いでいる。また、映画や音楽などのソフト領域まで事業が広がり、コングロマリット化している。

 ここ数年、Sony United やOne Sonyと叫ばれ、各事業間で相乗効果を上げようと躍起になっているが、音楽配信はAppleを無視しては事業にならないし、映像コンテンツもソニーの配信網だけでは儲けられない。また、保険や銀行とソニー製品の関係は遠く、経営戦略に組み込むには無理があるように見える。

 一方で、ホンダは二輪・四輪を中心とした移動手段の開発・生産・販売と領域が今も明確な上、技術的な夢を追いかけるという社是を実現している。藤沢武夫氏が考え抜いた組織は機能しつづけている。

 藤沢氏は、人々の力を結集させる軸こそが事業の永続に必要だと言っている。ソニーのコングロマリット化が悪いわけではないが、力を結集するには領域が広すぎるのかもしれない。

参考リンク:藤沢武夫 『経営に終わりはない』 1998 文春文庫

Thursday, August 23, 2012

日々|ビグ・ザム

長野の立派なモビルアーマー
■ 善光寺

 善光寺の近くで挙行された友人の結婚式が素晴らしく、お嫁様が良ければ歪んだ魂も浄化されるのだなと妙な納得をしてみる。きれいなジャイアンと一人つぶやく。

 ところで、善光寺はビグ・ザムに似ている。

 ↑これが言いたかっただけです。

■ 夏休み

 仕事の都合で夏休みが細切れになり、どこかに行くわけでもなく本を読む。別に、本を読むから賢くなるわけではないことは様々なところで自ら証明している。

■ 日本周辺の島と人

 同僚が韓国の人で、面倒くさい目にあっていないか注意を払っている。当人の主張は関係ない。意見が違うからと言って面倒事を作り出していてはキリがない。

 近代国家が排他的領土の保持を必要とする以上、弱肉強食の国際社会で主張を簡単に引っ込めれば利害得失の渦に巻き込まれる。その領土は、その社会集団が持つ物理的力と政治的力の総和によって排他性が保たれる。

 21世紀になっても、欧米がルールブックの19世紀的事実から逃れられる訳ではない。この100年、国境線はめまぐるしく変わっている。忘れかけていた力のポリティクスを、きちんと受け止めるしかない。

 一方で、ナショナリズムは火をつければ勝手に盛り上がってしまう歴史的事実にも目を向けなければらない。原理的に大メディアは大衆迎合しなければ生きていけないし、民主政治も同様の側面があるからだ。

 頼むべくは、自らの眼だけということである。なんとも心細いものである。

Wednesday, August 22, 2012

書評|冨山和彦・経営共創基盤 『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』 PHP 2012

冨山和彦・経営共創基盤
『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』
 本書は、国の企業再生機関であった産業再生機構のCOOを勤めた冨山氏が、財務や事業収益モデルの見極めを中心に、実務的な経営分析手法を紹介している。

 著者は「当事者意識を持たずにいくら決算書を眺めても、付け焼き刃の知識しか身に付かない。経営の修羅場、ガチンコ勝負に飛び込め。」と述べている。例えば、営業利益が赤字でも、先行投資中であれば問題ないかもしれないし、相場に大きく影響される事業構造なら、経営計画通りに事を進めるより、あえて何もしないことが必要な局面がある。そのため、数字や計画が適切かどうか判断するためには、企業が置かれている状況を肌身で理解しなければならない。

 冨山氏の分析ツールはMBA的な内容であり、テクニカルな話としては目新しくないかもしれない。しかし、財務だけでなく儲けの仕組みを含めた、「経営的実像は何か」という問いから導かれる洞察は、日々の事業に携わる人間にとって、会計的How to本を超える視座を提供してくれるだろう。

評価:★★☆ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:経営者的視点とコンサルタント的視点の間を行く妙味。熱い思いが伝わってきます。

参考リンク:冨山和彦・経営共創基盤 『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』 PHP 2012

Thursday, August 16, 2012

引用|呪詛~鷲田清一・内田樹 『大人のいない国-成熟社会の未熟なあなた』より

鷲田清一・内田樹
『大人のいない国―成熟社会の未熟なあなた』

「不当な利益を占有している」他者が、その不当に占有しているもの(健康、家族、財力、権勢、名誉、才能などなど)を失うことを強く念じること、それが「呪」である。「呪」は呪詛するもの自身には直接的利益をもたらさない。けれども、他者が何かを失い、傷つき、穢されることは彼らの「間接的利益」に計上される。
 ネット上の貶下的言説は本質的に「呪」である。「どうして彼らは自分の書いたものの責任を取ろうとしないのか」という最初の問いの答えはそれから導かれる。
 それは「呪」は、呪いの発信源が知られると、その効力を失うからである。
  「呪い」は「批判」ではない。その二つは別ものである。
  「批判」は発信者の身体を差し出さない限り機能しないが、「呪い」は発信者の身体を隠蔽することでより効率的に機能する。
 (鷲田清一・内田樹 『大人のいない国』 プレジデント社 2008 p74)
呪いに関する内田氏のお話は、言葉の力を知る上でも重要である。

 言葉を匿名かつネガティブに使えば呪詛となると内田氏は指摘する。呪詛は人の意欲を殺いだり、苛立たせたり、不安に陥れる。だからこそ、人と仕事をする上で重要なのは、意識してポジティブな言葉を吐けるかである。

 誰にも言えない暗い部分があったとしても、表は明るくなくてはならない。アナリスト、メディア、時には社員からも呪詛を投げかけられる経営の世界はなおさらだ。宅急便を展開した小倉昌男氏がネクラな性格をネアカになるよう努力したのも、ホンダの創業者である本田宗一郎や藤沢武夫が社内の明るさをいかに保つかに腐心したのも、この呪詛を克服するためである。

 良質な経営者は、変化の途上でわき起こる呪詛を乗り越える明るさと確信(内田氏の書では「祝福」にあたる)で乗り越えていく。

参考リンク:
鷲田清一・内田樹 『大人のいない国―成熟社会の未熟なあなた』 プレジデント社 2008

寸評: 日経のグリーや任天堂の業績報道を読んでいると時たま悪意すら感じられるのだが・・・。

Sunday, July 8, 2012

日々|身の回りだけは平和

・春の畑の末路
6月末にジャガイモを収穫して終了。嫁が周囲へ配ったり、とにかくさばく。自宅では芋を消費するためにドイツ料理が頻発。

・プチ遠出の計画
クロスバイクのグリップを換装し、バーエンドをつける。ついでにメットも買う。来週か再来週には家から久里浜に抜けて東京湾フェリーで金谷へ出、館山まで走る計画。

・7年目の社会人
再建案件と位置づけた仕事は固定費を削減し、販売施策のてこ入れで増収増益基調に転じる。ただ、今期に入って売上げの伸びが鈍化しているので、もう一押し。商品内容と価格の優位性を確保して2年はリードできるようにしたい。自分の気合い不足でスケジュールが遅れ気味だが、スピード感を取り戻したい。

・読書
経営関連では、B/SとCSの実務的理解を進めるため、小山昇氏、冨山和彦氏の書籍を幾つか読む。簿記や会計学は多少かじったが、実務面からB/SやCSを考えることは当分ないので、自分で教育しておく必要がある。

文化面では、ドナルド・キーン氏の自伝や対談集、恩師の吉本隆明についての新書を読む。目の前の現象をうまく捌き、金銭に変換することに励む日々から眺める世と、文学や思想から眺める世。思えば遠くへ来たものだ。

書評は後ほど。

・科学と技術は異なる
探査機はやぶさのプロジェクトリーダー 川口淳一郎氏が著書で、テクノロジーとサイエンスは違うことを指摘している。「科学技術」がなぜセットになったか、どこかの本で解説していたことを思い出す。

「技術」は効率的に物事を捌くための知識と技能である。「科学」は観察と実験を通して現象を論理的に体系づけていく知的行為である。この二つは別物。そのため、科学的原理を知らなくても、日本人は火縄銃を作ったし、硝石は古くから火薬として利用されていた。

18世紀以降、「科学」の進展を「技術」に生かした結果、人間の寿命が延び、探査機が小惑星へ行って戻ってくるようになった。そして、技術が進展した結果、新たな科学的知見が得られ、再び技術が発展した。お陰様で、あり得ないくらい人間が増殖し、あり得ないくらい人間が死んだ。

過去、西洋の武力的「技術」に着目した日本は、必要な「科学」も同時に導入する。世界を記述したい西洋的意欲とは別に、技術により国力を高めたい日本の事情が高じて「科学技術」となったと言うようなイメージか。

ここまでくれば、スーパーコンピューターがなぜ2位では駄目なのかが分かる。技術的優位が、科学的知見の優位性を作り出し、再び技術的優位性を生み出す。その技術的優位性が国力を裏打ちするという話が成立するからだ。

しかし、科学者にしてみれば、技術を磨くことで世界に対して新しい知見が得られる程度までしか普通は話さないだろう。読み解こうとする現象の内容が未知なのだから、どんな役に立つのですかと言われても答えようがない。この手の議論は科学者に説明を求めるより、思いがけない発見や一見無駄とも思える意欲と行動が、どれほど私たちの役に立っているか、質問者自身が認識すべき問題である。

Friday, June 22, 2012

書評|山口周 『天職は寝て待て』 光文社 2012

山口周
『天職は寝て待て』
新しい転職・就活・キャリア論
 本書は組織コンサルタント 山口周氏による転職・就活・キャリアに関する論考である。タイトルの「天職は寝て待て」は、「いい偶然」を引き寄せながら待とうという本書の主題を表している。理論的には教育・心理学者のジョン・クランツボルツ「プランド・ハプンスタンス・セオリー」が基だ。

  「好き」と「得意」の軸から職を選ぶ方法がある。しかし、「好き」のレベルには「やってみたら好き」から「誰に言われずとも行動している程好き」まである。また、「得意」と言っても、その職業に就く前から必要な能力を熟知し「得意」と言う人は少ない。だからこそ、柔軟性を持って「いい偶然」を引き寄せることが大事で、この「いい偶然」を引き寄せるためにも、今やっている仕事、今持っている人のつながりを大切にすべきと筆者は説く。

  山口氏の論考を読めば、「ありたい姿」を無理に設定して走るより、偶然を大事にして職業に変化を作り、結果的に「ありたかった姿」にたどり着く方が現実的だと分かる。もちろん、あるべき自己像に向けてひたすら努力をする方法を否定する話ではないが、一方の方法として極めて真っ当な話であると思う。


評価:★★★  (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:就活も転職も実際は自身の「欲」に絡んで選択する部分もあるので内省は大事。

参考リンク: amazon: 山口周 『天職は寝て待て 新しい転職・就活・キャリア論 』 光文社 2012

Wednesday, June 20, 2012

引用|いやな情報も捨てない!~司馬遼太郎『アジアの中の日本』より

司馬遼太郎
『アジアの中の日本』

情報というのは、見なくてわかる能力だから、情報を受けるのには、たいへんな研ぎすました認識能力が必要になる。情報なんていくらでもくるから、結局、受け手の問題ですよね。日本人は受け手の能力に欠けた民族なんやろな。いやな情報は捨てる(笑)。(P150)
現場に視点を据えて、データで語れと大先輩に教わった。実際、うまくいっていない組織的課題の多くが、この原則をはずしていることに起因している。山本七平氏は日本の組織的決定の様子を「空気の支配」と呼んだが、「空気」を打ち破るのは現実を直視する力である。皆が場の雰囲気に流されるのを防ぎ、メンバーの目を現実に向けさせることが、日本におけるリーダーの役割の一つだろう。

参考リンクamazon: アジアの中の日本―司馬遼太郎対話選集〈9〉 (文春文庫)

Thursday, June 7, 2012

日々|春の畑3

先々週、久々に畑に出る。

三週間も畑を明けてしまい、手抜きもここに極まった感がある。きっと雑草で埋まっているに違いないと覚悟を決めて畑を見たが、さほどでなかった。

ジャガイモの収穫は6月下旬。茎が黄色く枯れてきたら頃合いだ。今日は、雑草取りと少し削れた畝の盛り直し。畑で作業をしていると作物に意識が集中しがちで、花を愛でる気持ちにはならないが、ジャガイモの紫の花もなかなかよろしい。

秋はなに蒔くかな・・・。

閑話休題

畑作業で石などの堅い物を発見すると直ちに取り除く。農具が壊れるからだ。この異物を何代も取り除き続けた結果、すばらしい田畑となる。田んぼで泥遊びをしていた子供が「石がなくてすごい」と話していたのを見たことがある。何代も手をかけ続けているので、子供の遊び場としても安全この上ない。田畑の生態系は、安全でありながら、自然のディテールの細やかさや複雑さを教えることができる。きっと、子供の成長にも良い影響を与えることだろう。

Thursday, May 31, 2012

引用|顧客満足と利益の因果関係~小野譲司『顧客満足[CS]の知識』より

小野譲司
顧客満足[CS]の知識

しかしながら、顧客満足と利益との因果関係については、実務の経験則はもとより、学術的にも幾つかの実証研究が行われていますが、利益に影響を与える要因が顧客満足以外にも多数あることも手伝って、実際のところ確たる証拠は挙がっていません。(P17)
商工業は、「利益」を得るための経路として「顧客満足」が含まれているのが良い点である。「利益」を得るだけならば、盗みや暴力で奪うという手段もあるが、それを互恵的に行う術を発見したのは人間の進歩である。

小野氏は控えめに顧客満足と利益の因果関係に確たる証拠はないと書いている。実際は「顧客満足の追求からでも利益は上がる」ということだろう。だから、利益のみを求めるのなら顧客満足という手段を必ず取らなければいけない訳ではない。しかし、この方法で利益を上げることができれば、「厚い信頼と尊敬」を基盤とした「長期的な利益の確保」が実現するかもしれない。

利益との因果関係が薄くとも、顧客満足から開ける可能性は豊かである。

参考リンク: amazon: 小野譲司 『顧客満足[CS]の知識』 日本経済新聞出版社 2010

Saturday, May 26, 2012

引用|台湾人の悲哀と金 ~邱 永漢『邱永漢 短篇小説傑作選』 小説「香港」より

なるほど世間の風は冷たい。だが、その風で頭を冷やさなければ、人間は生きることの意味を忘れてしまう。牢獄は一時逃れのためにはいいかもしれないが、人間が本当に生きたいと思うときに、それができなくなってしまう。(P368)
邱永漢氏は、山師的な魅力を含んだお金儲け本を出す実業家として有名である。一方で、日本統治時代の台湾に生まれ、旧制高校から東京帝大へ進んだ台湾のエリート知識人で作家でもある。小説「香港」は氏の直木賞受賞作であった。

中国国民党に追われ台湾から脱出した主人公の頼春木は、香港の貧民窟に住む李明徴の部屋に逃避する。食べるにもこと欠く貧困の中、李は人を陥れてでも金儲けを企み、友人の大鵬は仲間の引き立てや馬券が当たることを待ちながら生活するに足らない賃金で肉体労働を続ける。春木は貧困からの脱出を考えながら、他人を陥れて金儲けすることにも、他力を当てにして単純労働で生きることもできず悩む。

作中、李は金の力に希望を見いだし、大鵬は労働の美徳に拠り所を持った。しかし、春木はそのいずれにも空疎さを感じて、儲け仕事の仲間を裏切り逮捕される。その時、李明徴が発した言葉を読めば、彼もまた狡賢い人間と言うより、崩壊した社会の中で、価値の拠り所をどこに置くか迷い続けた人間であることが分かる。この「価値の拠り所」が本作品に通底するテーマだが、しかしそれは終局に至っても見つからないのである。

年配の台湾人が支配の象徴でもあり故国でもあった日本に、愛憎入り組んだ複雑な感情を抱いているのは、様々な文献で知ることができる。春木の逃避先では、あれほど台湾人に教え込まれた「日本人」としての美徳や価値観はなんの役にも立たなかった。しかし、そこに台湾人は迷うのである。邱永漢氏の向かい合った文学もその足跡も、そんな台湾人の複雑性を体現したものであると思う。
君、悲哀は人間性のもっともっと深いところに根ざしていて、社会制度をいくら改善したところで、解決できないものだからな(P378)
 参考リンク: amazon:邱永漢 「短篇小説傑作選―見えない国境線』新潮社(絶版)