Wednesday, April 25, 2012

引用|ある時代の片付け~小出裕章 『原発のウソ』より

小出裕章
『原発のウソ (扶桑社新書)』

日本が原子力発電をはじめてから、まだ45年しか経っていません。<中略>それなのに低レベル放射性廃棄物は「300年お守りする」などという約束をしている。(P178)
国が低レベル放射性廃棄物を六ヶ所村に埋めて、300年管理すると言っている。この計画に対して、明治維新から143年しか経っておらず、300年さかのぼれば忠臣蔵をやっていたではないかと小出氏は言う。高レベル放射性廃棄物にいたっては~万年安全性が保たれなければならない。明日の天気予報だって外れるくらいなのに、~万年なんてものは想像の対象外である。

科学技術への信頼が高く、原子力が抱える問題もやがて解決すると踏めた明るい時代があったことは確かだ。だから、誰が悪いなどと全てを否定をする訳にも行かない。しかし、夢から覚めた今、事実に基づいて現実に向き合わなければならない。原発のゴミの管理は国が現在行うような方法しかないのか、近い将来に技術革新が見込まれるのか、国民も政治家も役人も経営者も技術者も全てをファクトベースで見つめなおして考え抜く。原発も含めたエネルギーのあり方全てに。 

Sunday, April 22, 2012

引用|顧客志向~ケン・オーレッタ 『グーグル秘録』

ケン・オーレッタ
『グーグル秘録』

検索結果が適切であるほど、ユーザーがヤフーのホームページを離れるまでのページビューが少なくなってしまう。十ページ閲覧する代わりに、二~三ページしか見ないようになれば、ヤフーが広告主に対して売り物にしているページビューが減少してしまうと恐れたのだ。(P7273
Googleが成功したのは、優れた検索アルゴリズムを持っている以上に顧客志向であったためだ。2000年代前半、ネットの入口を押さえるべくヤフーなどの主要なプレーヤーがポータルサイト戦略を展開していた頃、Googleはユーザーが求めているのはポータルサイトの情報に囲い込まれることではなく、ほしい検索結果が得られ、目当てのサイトに行き着くことだと考えた。ヤフーも他のサイトも「ユーザーが求める検索結果」より「広告主が見せたい検索結果」を重視していたし、それ以上に自社コンテンツにユーザーを囲い込み、如何に広告媒体として魅力的かをアピールすることに必死だった。

結局Googleがその圧倒的な利便性で閲覧数を伸ばし、広告媒体としても勝ち残っていった。一方で、米国のヤフーは自社ページの閲覧回数を増やすことができず伸び悩んでいる。同じヤフーでも日本法人は「検索」の部分をGoogleのシステムに任せ、魅力的なコンテンツ作りに注力して国内で最有力のポータルサイトとなった。

技術志向にせよ、コンテンツ志向にせよ、「顧客志向」が大きな要素となるという話。

Sunday, April 15, 2012

引用|公という仕事の醍醐味 ~宮本常一『塩の道』

宮本常一
塩の道

こういう吹出物などがずっと減ってくるのは、明治三十八年の専売制が施行されてからのちのことだと思われます。専売制が施行されることによって、隅々まで塩がじゅうぶんにいきわたるようになり、同時に、それによって政府は塩から上がる税金を、そのまま直接取り立てることができるという点では、大変国策的だったと思います。
宮本常一『塩の道』講談社 1985 p77
明治期に日本を旅行したイザベラ・バードが、東北の山奥の人々は目が悪く、吹き出物が多いと記録している。これらは塩の不足にみられる症状と宮本は指摘する。

人間を含めた多くの動物は、生命を維持するために塩が必須である。しかし塩は日本では少ない例外を除いて海岸でしか取れない。この物資の取引でできた道が「塩の道」である。東北の山奥の記録は、この塩すら十分賄うことができない土地があったこと示している。

明治に国民国家が立ち上がり、塩を国家管理にしたことで、塩は手ごろな価格で津々浦々に行き渡るようになった。同時に、その税収は国家建設の原資となった。塩という戦略物資の流通を調整するには、国民国家の登場を待たねばならなかった、そういう話であり、全体最適の好例と言える。

このような話は明治期には枚挙にいとまがない。公共の仕事の醍醐味を感じる部分である。


参考リンク: amazon: 宮本常一「塩の道」

Thursday, April 12, 2012

書評|三枝匡『V字回復の経営-2年で会社を変えられますか』 日本経済新聞社 2006

三枝匡
V字回復の経営
―2年で会社を変えられますか
三枝匡『V字回復の経営-2年で会社を変えられますか』は、架空の大手産業機械メーカー 太陽工業 アスター事業部を舞台とした、経営再建ドラマである。太陽工業子会社での経営再建実績が買われた黒岩莞太は、過去何度も「改革」が失敗し、赤字が続くアスター事業部に呼び戻される。取締役事業部長に据えられた黒岩は、社長 香川五郎のスポンサーシップの下で、不振事業の戦略を転換し成果に導いていく。

本書は三枝匡氏の企業再生三部作の中で、特に事業改革プロセスをテーマとした小説である。他二作での事業再生対象は子会社などの社外組織で、主人公は経営トップとして赴任した。しかし、本作では本社の一事業部を対象とし、リーダーの上には社長もいれば上席者もおり、部下には年上の先輩もたくさんいるという「改革に対する抵抗」や「緊張感」が数段厳しい状況が設定されている。また、「改革」何度も叫ばれながら、何も変わらなかった「疲弊した組織」の特徴をポイント解説を交えて描かれており、生々しさが増している。。

「改革ステップ」を軸に話が展開する本書は、組織の病巣の分析や、ギリギリの状況を渡っていく緻密な事業再生計画の立案・実行が見どころであると思う。

組織改革の力点やコツを疑似体験できる本書は、経営の教科書として価値あるものだ。
■ 改革 9つのステップ

2.成り行きのシナリオ
↓   ←1.期待のシナリオ
3.切迫感

4.原因分析

5.シナリオ
↓   ←6.決断
7.現場への落とし込み

8.実行

9.成果の認知

評価:★★★  (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:改革の力はトップ次第と感じる本書。本当に身につまされました・・・。
参考リンク: amazon: V字回復の経営―2年で会社を変えられますか
関連Post:
書評|三枝匡 『経営パワーの危機 企業再建の企業変革ドラマ』 日本経済新聞出版社 2003
書評|三枝匡『戦略プロフェッショナル ―シェア逆転の企業変革ドラマ』 日本経済新聞出版社 2002
引用|三枝匡『V字回復の経営 2年で会社を変えられますか』日本経済新聞出版社 2006

Monday, April 9, 2012

書評|吉越浩一郎 『仕事ができる社員、できない社員』 三笠書房 2011

吉越浩一郎
仕事ができる社員、できない社員』
吉越氏は下着メーカーのトリンプ日本法人社長として長期にわたる増収増益を達成する一方、残業をさせない経営や社員の業務効率を上げるために電話や打ち合わせを一切しない「がんばるタイム」の導入などで注目を集めた経営者である。本書は吉越氏が長年実践してきた仕事のポイントや、社長時代に評価した仕事像をTIPS形式で紹介している。

吉越氏は合理の人である。その著書では「デッドライン」を仕事に設定し、無駄なことを極力排除して集中して仕事をすることが一番経営効率を高めることが必ず紹介されている。本書では、以上に加え経営に携わる人間に必要な習慣や能力といった要素を紹介している。

本書の内容自体は、よくある自己啓発本である。そこに吉越氏の積年の主張である、「ワークライフバランスの厳格な峻別」を付け加えると、エッジの利いた内容となる。職業人としての人生、夫や父としての人生を共に充実させるためのヒントとなると思う。


評価:★★☆  (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:合理の人であるから、内容にエッジが利いている。弱肉強食が嫌いな人はおすすめできない。
参考リンク: amazon: 仕事ができる社員、できない社員

Friday, April 6, 2012

引用|GEのGrows Traits (成長する人の資質)

三谷宏幸
世界で通用するリーダーシップ

「GE Growth Traits 成長する人の資質」

External Focus   外部思考
Imagination   想像力
Expertise   専門性
Clear Thinker    明晰な思考
Inclusiveness   包容力
三谷宏幸氏『世界で通用するリーダーシップ』で、GEの「成長する人の資質」が紹介されている。これを読めば経営の本質は洋の東西を問わないことが分かる。

この資質は「人」だけでなく、「組織」も同じである。 例えば不振組織はこの逆を考えればよい。仕事では内向きの話が多く、施策は競合の下手な後追いばかり、自らの強みが不明確で、ロジックより内部の理由が先立ち、変化への許容力が乏しい。

例えば第二次世界大戦が終わって、日本は「マーケティング」という言葉のイロハから欧米を学び、研究し、大いにとりいれた。高度成長期、日本企業の経営手法は徹底的に世界から学ばれた。経営は学び学ばれる。 多くの組織が弱くなったと言うのであれば、各層の学びの弱まりが原因だ。

学びの臨界点からしか新たな創造はない。


参考リンク:amazon: 『世界で通用するリーダーシップ』

Tuesday, April 3, 2012

日々|傲慢の効用

栢野氏の湯飲み買いました。
成功により傲慢になったり、慢心したりして、失敗を呼び込む例は沢山ある。経営者や事業もしかり。しかし、最近書評した三枝匡氏の言を借りれば、そうした傲慢は麻疹の様なもので成長するための通過儀礼のようなものである。

たぶん、ライブドアの堀江氏は刑務所から出てもなお成功者であり続けるだろうし、事業に対する風当たりが強くなっているGREEの田中氏も、さほど問題ないと思う。若くして経営者として成功し、傲慢により躓いたとしても、多くの人が一生かかっても経験しないような経営経験を持っており、取り返しのつく年齢だからだ。

人の失敗を笑っても、自分は成長しない。それどころか、一つ心が卑しくなる。ならば少しでも挑戦して学ぶ方がよっぽど大事ではないか。そんな気持ちの本日。