| 藤沢武夫 『経営に終わりはない』 |
ところが、ある特定の一人、二人が為替をいじって、五千万とか一億円儲けたとします。すると、営々と働いて三千万円の利益しか上げられない多くの人たちは、為替の大もうけに決していい感じは持たないだろうと思います。
物をつくる会社に働いている物をつくる人たちは、自分たちの働きが、あるひとつの知恵による稼ぎよりも劣ったものでしかないと思ったときに、寂しさを感じて、情熱を失ってしまうだろうと思う。ホンダは物をつくる会社なのです。
ですから、どんな儲かる話があっても、その話には乗らない。儲けるならみんなの働きで儲けるんだということを、ホンダの金科玉条にした。
(藤沢武夫 『経営に終わりはない』 1998 文芸春秋社 初出典 1986 ネスコ刊)
ホンダは本田宗一郎氏が開発を、藤沢武夫氏が経営を担当していた。ソニーも井深大氏が開発を、盛田昭夫氏が経営を担当し、双方共に経営の好事例として種々取り上げられている。しかし、この二つの会社の行く末には違いが生じている。
ソニーグループの利益の多くは、物作りではなく金融子会社が稼いでいる。また、映画や音楽などのソフト領域まで事業が広がり、コングロマリット化している。
ここ数年、Sony United やOne Sonyと叫ばれ、各事業間で相乗効果を上げようと躍起になっているが、音楽配信はAppleを無視しては事業にならないし、映像コンテンツもソニーの配信網だけでは儲けられない。また、保険や銀行とソニー製品の関係は遠く、経営戦略に組み込むには無理があるように見える。
一方で、ホンダは二輪・四輪を中心とした移動手段の開発・生産・販売と領域が今も明確な上、技術的な夢を追いかけるという社是を実現している。藤沢武夫氏が考え抜いた組織は機能しつづけている。
藤沢氏は、人々の力を結集させる軸こそが事業の永続に必要だと言っている。ソニーのコングロマリット化が悪いわけではないが、力を結集するには領域が広すぎるのかもしれない。
参考リンク:藤沢武夫 『経営に終わりはない』 1998 文春文庫
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