■ 師走の風景
「あー、もう11月ですか。今年も早かったですね。」と、職場で話したのは昨日ではなかったか・・・。気がつくと12月。一体、お前の霜月はなんだったのだと、天に嘲笑われるような気持である。このままでは、ふと気が付いたら皺くちゃになって棺桶の中にいそうで落ち着かない。
やり残したことがたくさんあり、不義理をしている方々がたくさんおり、携わる事業が下半期突如として不調に陥りあわただしく駆け回る。心残りな気持ちが足を急がせる。師(師は僧侶だそうだ)ですら走るのなら、自分は全力疾走しなければ間に合わない。
年の瀬まであと少し。さぁ、今年もがんばろう・・・orz。
■ 楽天 KoboとAmazon Kindle
電子書籍端末 楽天 Koboの立ち上げを注視していた。一日の長があるAmazon Kindleにどう挑むのか、そんな関心を持っていた。
実績や期待値で勝るKindleより「早く」、先行する他のライバルより「安く」、「豊富な品ぞろえ」でマーケットを制するKoboの戦略は、ガチンコ勝負型の挑戦者として正統派であった。対してKindleは7月より足かけ4か月も「すぐ発売する」とアナウンスし続け、ユーザーの「待ち」を誘発する「期待値の高い製品」ならではの作戦を実施する。Amazonもなかなか黒い・・・。
結局、Koboのスタートは散々だった。Amazonより「早く」、他のライバルより「ぶっちぎりで安く」は実現した。しかし、問題はその先である。
- 初期設定トラブルが発生
- クレームレビューは「編集」され、口コミが提灯記事化
- 社長のフォローコメントにユーザーが激怒して炎上
- 書籍点数が先行他社より少なく、年末までに20万タイトルを約束するが、タイトル水増しが発覚し消費者庁から指導
- 楽天運営の他の電子書籍ストアを終了した際、Koboへの移行特典をつけたが、他のマイナス面が強調され続ける
- 楽天カードのプレミアム会員に突如Koboを無償提供。その端末がヤフオクに大量出品され値崩れが発生し、不人気感が蔓延
「豊富な品ぞろえ」がうまくいかず、クレーム対応にも失敗。以前の電子書籍ストアの店じまいは、アフターフォローしたのにタイミングが悪く不評ぷんぷん。挙句の果てに、自らの作戦でKoboが値崩れを起こし、購入者に不満が蓄積。事業そのものの信頼を早々に失い、返ってKindleへの期待感を高める結果となった。
これほど凄まじい自爆も近年珍しい。
一方、Kindleは敵失を横目に準備万端でサービスを開始。洋書が「日本プレミアム価格」だった点に英語本ユーザーががっかりした点を除けば、商品点数はそこそこ、端末価格はKoboとほぼ同等で、一度買った本はタブレットやスマートフォンで読める環境を初めから実現している。さらに通常の書籍販売ページに「Kindle化リクエスト」の項目をつけるキメの細かさ。横綱相撲を地で行く展開となった。
さて、このKoboのスタートアップ炎上で特に感じるのは次の2点。
- 失敗シナリオの準備不足
- 組織的実力を上回る戦略の実施
トラブル時の備えもないままロケットを飛ばしたら、途中で分解して阿鼻叫喚といった状態である。自己の実力で実行できる戦略を見極める必要があったし、うまくいかなかった時を考えておけば、新製品を「いきなり無料で配る」こともなかっただろう。
また、書籍点数の水増しが起こった原因として、
- 事業の意思決定者とサービス現場までの距離の遠さ
- 経営陣の目標設定ミス
が想像される。「頑張ってできる」と「無茶」の境目を悠々と飛び越えてしまうほど、組織内部の情報が断絶し、意思決定を誤ったのではないか。そして、タイトル数の水増しはそのしわ寄せが現場に行った結果ではないか。
このような事態を修正するには、経営力と現場視点を兼ね備えた人材に権限を委譲し、事業の意思決定レベルをサービス提供現場や開発現場に近付けることが必要だ。意思決定者の目線が顧客に近付けば、経営上の目標も適切な位置に落ち着くはずである。Kindleのユーザー目線の徹底具合を見れば、Amazonの意思決定者はサービスの最前線にいると考えられる。
今後、それぞれの電子書籍端末やストアがどのような経緯を辿るのかは分からないが、Koboの激しすぎる失敗スタートアップは勉強になる点が多かった。経営陣の強気を横目に、楽天の現場は矛盾や無理は承知の絶望的戦いを繰り広げたのではないかと思われる。楽天自体は強力なポイント還元やAmazonにはない事業展開の広さなど「強み」が多いので、今後のKobo事業を悲観的に見る必要はないが、成功するには組織としてどれだけ変われるかが鍵となるだろう。