Wednesday, October 24, 2012

書評|龍 應台 著・天野 健太郎 訳 『台湾海峡一九四九』 白水社 2012

龍 應台
『台湾海峡一九四九』
 本書は中国国民党政府が共産党との内戦に敗れ、中国本土から台湾や香港へ去らねばならなかった人々の漂泊の歴史を、膨大な聞き取り調査から描いたオムニバス形式の文学作品である。

 著者は国民党と一緒に台湾へ逃れてきた人々の視点を基本に置きながら、それぞれの個人史を作品として編んでいく。ある人は国民党に軍人としてさらわれた揚句に台湾に逃げざるを得なくなる。ある人は日本軍や共産党を相手に中国各地を「国」のために転戦した揚句に、国家もろともが吹き飛んでしまった。このように、本書では中国内戦に敗れた側の人々を「傷を抱えた人々」として描いていることが特色である。また、日本軍人として前線に送られた台湾人、日本の戦争捕虜となったアメリカ人、ニューギニアの奥地で果てた日本人の話なども収録されている。

 本書の美点は、民族の視点でなく、巨大な歴史のうねりに翻弄された個々人の複雑な感情を、「結論づくでまとめることなく」作品化していることではないだろうか。もちろん触れていない歴史的な事件もある。しかし、歴史の断片を「ありのままに見る仕事」は台湾だけでなく日本を含んだこの海峡周辺の人々の複雑な事実を掛け値なしで書き出してくれる。


参考リンク:龍 應台 著・天野 健太郎 訳 『台湾海峡一九四九』 白水社 2012

評価:★★★ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)

寸評になっていない寸評:

 義務教育で教わった日本の近現代史を思い起こせば、1945年に敗戦があり、1950-53年の朝鮮戦争特需を経て高度成長が起こり「今に至る」で終わっていた。「今に至る」がバブルの終焉した時期であったのは皮肉であったが・・・。

 一方、近隣地域では1945年の日本敗戦は復興の起点ではなく、混乱の起源である。朝鮮は戦争によって南北に分断され、中国本土は国民党と共産党の内戦を経て、1960年代後半から70年代には文化大革命で大量の餓死者をだした。台湾は日本統治から中国国民党統治の時代となり、本土出身の支配者と台湾人の流血を伴う軋轢が続いた。このような歴史は、一般的な教育機会では教えられない。

 しかし、この複雑性を考えることなしに日本とアジア諸国の関係を理解することはできない。少なくとも各界の実務者は、近隣の人々のもつ経験が複雑であることくらいは基礎知識として叩き込んでおくべきだろう。

Sunday, October 21, 2012

日々|スイッチを押すのは誰なのか

小湊鉄道にしびれる。
■ やる気スイッチ

  「やる気スイッチが入らない」と一言残して電車に乗る。

 目的地はない。人ごみに出るのは嫌だし、さりとて誰もいない駅で降りるのもなにか違う気がする。

 車窓から海の眺めを楽しむより他はない。

 ぼんやり景色を眺めながらウトウトすると、見えない誰かがスイッチを押してくれたらしく、読書を開始する。カバンに重い書籍を入れているのはハッタリではない。1カ月の間の2日間くらいは・・・。

 読書と言えば、学生時代には池袋の皇琲亭で800円の珈琲をすすって本を読んだり論文を書いていた。今、ドトールにて200円のアメリカン珈琲を所望すれば2時間粘れる。

 「下部構造(経済)が上部構造(自分の社会的行動)を規定するんです」といった髭の大将の言葉は至言である。

 結婚して自由に使えるお金が減った話・・・ではなくて、暮らしがどんどんシンプルになっている話である。

 決して、相模湾にむなしくこだまする何かではない。


■ 朋遠方より来る

 遠方の友人の来訪がある。

 あの人には勝てない的な何かを持つ御仁で、生活資材どころかエロ本まで拾い物であった彼の生活力には畏敬を抱くより他はない。学生時代の話だけれども・・。

 そんな友人も、娘もできて、四国の大学教員である。

 物理学者 長岡半太郎は「何々になりたい者は多いが、何々をしようという者は少ない」と言った。御仁のように友人連中は後者が多い。仕事だと前者をよく見かける。が、別にどちらでもいいのである。

 なにより、「やる気スイッチ」とか言っている自分はなんにもしていない。

Saturday, October 20, 2012

書評|大泉啓一郎 『老いていくアジア-繁栄の構図が変わるとき』 中央公論新社 2007

大泉啓一郎
『老いてゆくアジア
―繁栄の構図が変わるとき』
 最近100年間、多産少死という状況が発生したことは特筆すべきことである。それまでは多産多死が一般的で、年齢を重ねるほど生き残る人数は少なかった。医療や保健衛生が進歩し普及した結果、生まれた人間の多くが死ぬことがなくなり、一時的に膨大な集団が現れた。日本で言えば、第二次世界大戦の手前から団塊世代に当たる層がその集団に当たる。社会的負担を要する高齢者が少ない状況で、圧倒的多数の若い労働力を上手く活用できれば、継続的な経済成長が可能となる。その力を活かすには、インフラ、教育水準、社会福祉政策などが適切に実施される必要があるが、アジア諸国の高度成長の背景には「働き、消費する人口」が圧倒的多数を占めていた状況があった。

 本書はそのような「人口の動き」からアジア経済の今後を探る。そして、タイトルに示された通り、アジア諸国は多産少死から少子高齢化へと移行する中で高い経済成長の時代が終焉し、膨大な高齢者の医療と生活をいかに保障するかという問題への対処に迫られることが指摘される。

 しかし、少子高齢化の状況が今後生じるのは同じでも、日韓台のように先進国レベルの経済力で高齢化に入る国もあれば、中国、タイなどのように中進国水準で高齢化に入る国もある。それぞれの経済力や社会環境に見合った内容で、膨大な高齢者をいかに養うかを真剣に考える時代に来ている。

 いずれの国も、国家が全てを養うことは不可能で、地域レベルで住民自身が課題を解決していく必要がある。本書は人口と経済の関係から始まり、国家的福祉の限界と対応策まで幅広く説いている。また、人口面を知ればそれぞれの国の成長の限界も見えてくる。経済的な勢いは国際社会における「力」の一つである。そういった意味でも価値ある一冊だ。


参考リンク:大泉啓一郎 『老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき』 中央公論新社 2007

評価:★★★ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:人口的な側面から考えると、現代の社会環境の変化が非常に理解しやすい。
    頭に入れておいて損はない良著。一般向けとしてはやや学術的匂いあり。

Wednesday, October 17, 2012

書評|牧野知弘 『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』 祥伝社 2012

牧野 知弘
『なぜビジネスホテルは、
一泊四千円でやっていけるのか』


 本書は解説本のようなタイトルだが、内容はホテル業界でコンサルティングを営む著者のエッセイである。宿泊事情の変遷や、困ったお客様の生態、楽天トラベルなどネット系予約サイトの登場による競争環境の変化などがやわらかいタッチで描かれており、経営的な話は後半に若干といったところ。

 1990年代に40万室であったホテル業の客室数は80万室へと倍増した。そのほとんどがビジネスホテルである一方、高級ホテルも外資系の参入で多様化している。 新書全体を通した筋があるわけではないが、高級ホテルがちょっと贅沢しに行くような気軽な場所となったり、ビジネスホテルが仕事や旅行の一コマになったりと、気付かないところでダイナミックに変化していた業界だったことに驚く。

 また、日本の競争の激しさが結果的に世界の一流ホテルを格安で利用できるようにしてしまったのも、この国のサービスマインドを考えると納得せざるを得ない。 贅沢の象徴であったり、清潔簡便な寝床であったり、様々なレベルでサービスの工夫が繰り返されるホテル業。業界の奥の深さと面白さがわかる一冊。

参考リンク:牧野 知弘『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』祥伝社 2012

評価:★★☆ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:「ホテルの仕事が好きと」いう著者の心意気が伝わる一冊。

Sunday, October 14, 2012

日々|輪行にて

夏の空もラスト 上総湊
9月初旬、久里浜経由で千葉に渡り、養老渓谷まで自転車で走る。60kmくらい。養老渓谷の温泉はアルカリ性で黒い。すべすべというかヌルヌルになるが気持ちよかった。


先週は長野 佐久から十石峠を越えて群馬 上野村まで出る。仲間のマシントラブルで秩父に到達しなかったが、秋の峠も気持ちがいい。熊が出るってはなしもあるけれども。

ビールと温泉入るために、自転車やったり走ったりしてるんじゃないかと思う昨今。
これで国道です! 十石峠