Saturday, October 20, 2012

書評|大泉啓一郎 『老いていくアジア-繁栄の構図が変わるとき』 中央公論新社 2007

大泉啓一郎
『老いてゆくアジア
―繁栄の構図が変わるとき』
 最近100年間、多産少死という状況が発生したことは特筆すべきことである。それまでは多産多死が一般的で、年齢を重ねるほど生き残る人数は少なかった。医療や保健衛生が進歩し普及した結果、生まれた人間の多くが死ぬことがなくなり、一時的に膨大な集団が現れた。日本で言えば、第二次世界大戦の手前から団塊世代に当たる層がその集団に当たる。社会的負担を要する高齢者が少ない状況で、圧倒的多数の若い労働力を上手く活用できれば、継続的な経済成長が可能となる。その力を活かすには、インフラ、教育水準、社会福祉政策などが適切に実施される必要があるが、アジア諸国の高度成長の背景には「働き、消費する人口」が圧倒的多数を占めていた状況があった。

 本書はそのような「人口の動き」からアジア経済の今後を探る。そして、タイトルに示された通り、アジア諸国は多産少死から少子高齢化へと移行する中で高い経済成長の時代が終焉し、膨大な高齢者の医療と生活をいかに保障するかという問題への対処に迫られることが指摘される。

 しかし、少子高齢化の状況が今後生じるのは同じでも、日韓台のように先進国レベルの経済力で高齢化に入る国もあれば、中国、タイなどのように中進国水準で高齢化に入る国もある。それぞれの経済力や社会環境に見合った内容で、膨大な高齢者をいかに養うかを真剣に考える時代に来ている。

 いずれの国も、国家が全てを養うことは不可能で、地域レベルで住民自身が課題を解決していく必要がある。本書は人口と経済の関係から始まり、国家的福祉の限界と対応策まで幅広く説いている。また、人口面を知ればそれぞれの国の成長の限界も見えてくる。経済的な勢いは国際社会における「力」の一つである。そういった意味でも価値ある一冊だ。


参考リンク:大泉啓一郎 『老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき』 中央公論新社 2007

評価:★★★ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:人口的な側面から考えると、現代の社会環境の変化が非常に理解しやすい。
    頭に入れておいて損はない良著。一般向けとしてはやや学術的匂いあり。

No comments: