解剖学者の養老孟子と僧侶の玄侑宗久。科学と仏教の二つの側面から「からだ」を語ることで豊かな対談となっている。
観念と身体、都市と自然、世間と個人、脳と魂。目次は脳が作り出す「ああすればこうなる」式の世界観と多様な要素が複雑に影響しあい予想を超えた変化と現象を生みだす「生きるシステム」の対比となっている。
本書の面白さは、科学的世界観が説明しづらい世の中の曖昧さを、仏教や日本人の伝統的価値観がきちんと把握していることが分かることだ。例えばカオス理論であれば、養老氏は以下のように答えている。
「仏教世界ではカオスが当たり前なんです。(中略)ただ、西洋人は論理的に細かいところを全部詰めていって、終点の所でカオスを発見する。(中略)ところが、日本人は「当たり前じゃないか」って言って、一切手続きは踏まない。」
風が吹けば桶屋が儲かり、縁起があるから適切な人や物に出会い、山の豊かさは河川や流域だけでなく海の豊かも保障する。これをごく当たり前ことだと改めて認めることで、随分世界の理解が豊かになる。
対談形式のため一つ一つの話が深くなるわけではないが、養老氏の稀代の知性と玄侑氏の仏教と哲学的素養が絡み合う「禅問答」は世の中の見方を教えてくれる。
評価:★★★
(★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
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