| 小出裕章 『原発のウソ (扶桑社新書)』 |
例えば、文部科学省は福島県に対して学校の放射線空間線量の安全基準を一時間当たり3.8マイクロシーベルト以下としている。しかし、1日8時間野外にいたとすると、年間20ミリシーベルト。これは原発作業員が白血病を発症すれば労災認定されるレベルで、放射線の影響が出やすい子ともの基準としては大きすぎると小出氏は言う。
また、東京湾に火力発電所が沢山立地しているが、原子力発電所は新潟、福島など人口密集地から離れた地域に立地している。国は1960年に「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害に関する試算」を行い、「原子炉立地指針」でそのように決めているからである。「絶対」安全でないから、試算や立地指針がある。
以上のように、本書は原発の事実を脚色なしの事実として見せてくれる。
国家としてリスクを考える姿勢を持っていたはずが、「絶対安全でなければならない」と念仏を唱え、リスクに機敏に対応せずにリスクを引き受けてしまったのは、なにも国や東電だけの責任ではない。それ故か、小出氏は「国が悪い」と単純に片付けていない。国民の便利さの追求がエネルギー消費となり、原発の推進となって現れてきた以上、一人ひとりが足るを知り、エネルギー消費を安全な電力でまかなえる範囲に押さえることだと締めくくっている。
この冷静な姿勢もまた、科学者の役割である。
評価:★★★ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:事実は事実としてとらえられる良書。内容も平易。
参考リンク:小出裕章 『原発のウソ (扶桑社新書)』 扶桑社 2011
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