本書は2001年に放映されたNHKスペシャル「被曝治療83日間の記録~東海村臨界事故」の取材記録を基に、被曝した大内氏と治療を行った医師団の83日間を記録している。
大量被曝した瞬間、放射線を浴びた細胞の染色体は瞬時に破壊され、血液、皮膚、臓器などで新しい細胞が作られなくなる。被爆直後は全く問題ないような身体が、溶けていくように機能しなくなり死に至る。医師団は医療技術の全てを投じて前例のない「治療」を行うが、若干の延命という結果を得られるに過ぎなかった。本書ではこうした医学的記録のほか、大内氏やその家族、医師、看護師などの心の葛藤も同時に描写されている。
業務上の事故で亡くなる人々が多々いる中で、なぜ被曝事故がこれだけ取り上げられるのか。分かったのは、放射線が見えない上に広範に被害を及ぼす脅威であり、治療の前例も方法も少ないということである。本書は「100%死亡という結果だけが分かっているけれども、その過程は良く分からない」そんな極限の状況を伝える一冊だ。
評価:★★★ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:放射能を理解するうえでも必読の書
参考リンク: amazon: 朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)
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