Thursday, November 24, 2011

書評|NHK取材班『朽ちていった命-被曝治療83日間の記録』 2006 新潮社

1999年9月、茨城県東海村の核燃料加工施設で、核燃料の臨界事故が発生。当時、ウラン燃料の濾過・沈殿工程で作業をしていた37歳の大内氏と同僚の篠原氏はチェレンコフ光と呼ばれる青い光とともに、20 Svもの放射線を浴びる。一般人が浴びても問題ないレベルの2万倍、死亡率100%の線量であった。

本書は2001年に放映されたNHKスペシャル「被曝治療83日間の記録~東海村臨界事故」の取材記録を基に、被曝した大内氏と治療を行った医師団の83日間を記録している。

大量被曝した瞬間、放射線を浴びた細胞の染色体は瞬時に破壊され、血液、皮膚、臓器などで新しい細胞が作られなくなる。被爆直後は全く問題ないような身体が、溶けていくように機能しなくなり死に至る。医師団は医療技術の全てを投じて前例のない「治療」を行うが、若干の延命という結果を得られるに過ぎなかった。本書ではこうした医学的記録のほか、大内氏やその家族、医師、看護師などの心の葛藤も同時に描写されている。

業務上の事故で亡くなる人々が多々いる中で、なぜ被曝事故がこれだけ取り上げられるのか。分かったのは、放射線が見えない上に広範に被害を及ぼす脅威であり、治療の前例も方法も少ないということである。本書は「100%死亡という結果だけが分かっているけれども、その過程は良く分からない」そんな極限の状況を伝える一冊だ。

評価:★★★ (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:放射能を理解するうえでも必読の書
参考リンク: amazon: 朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)

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