Saturday, March 31, 2012

書評|三枝匡 『経営パワーの危機 企業再建の企業変革ドラマ』 日本経済新聞出版社 2003

三枝匡
『経営パワーの危機
―会社再建の企業変革ドラマ』
三枝匡氏の企業再生三部作第二弾である本書は、経営戦略に加えてリーダー育成をテーマとした実業小説である。本作の舞台である大手化学メーカー新日本工業は、多角化を進めるため新規事業開発に乗り出すが、どれもがうまく進まなかった。その要因を探るうちに、経営人材の育成が進んでいない現状が問題視される。新日本工業社長の財津は経営者候補の育成を狙い、投資先で不振の分析機器メーカー東洋アストロン再建に中堅社員の伊達陽介を送り込む。

本書は三枝三部作の第一弾『戦略プロフェッショナル』より難しい局面がケースとして与えられる。東洋アストロン社長の伊達陽介は、特注品から汎用品への事業転換と開発戦略立案だけでなく、資金繰り、リストラ、開発・生産現場や人間関係の混乱を抱えた会社のかじ取りを行っていく。また、伊達の成功による増長や財津社長のミスリードを描くことで、人材育成上のポイントも押さえることができる。

本書に通底するのは、大企業における経営人材枯渇に対する三枝氏の懸念である。日本の大企業に見られる長期雇用慣行(多くは年功的な特性を帯びる)や機能別事業部制(営業・販売・開発などの機能別縦割り組織)などの経営手法が、組織全体を見る経営マインドの育成を妨げている。そのため、三枝氏は若いうちから経営者としての経験を積む必要性を訴えている。

また、前作では「セグメンテーション」を利用した販売戦略立案が経営戦略論上の見せ場であったが、本作ではマトリクスを利用した競合分析や開発戦略が見どころとなっている。

前作以上に経営視点のため、取り上げられるテーマは多岐に渡るが、それだけ経営者の難しさとダイナミクスが感じられる内容に仕上がっていると思う。


評価:★★★  (★★★:とても良い ★★☆:良い ★☆☆:普通 ☆☆☆:好きな人向け)
寸評:内容が多岐にわたり複雑だが、『戦略プロフェッショナル』より臨場感がある。
参考リンク: amazon: 経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

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