Sunday, April 15, 2012

引用|公という仕事の醍醐味 ~宮本常一『塩の道』

宮本常一
塩の道

こういう吹出物などがずっと減ってくるのは、明治三十八年の専売制が施行されてからのちのことだと思われます。専売制が施行されることによって、隅々まで塩がじゅうぶんにいきわたるようになり、同時に、それによって政府は塩から上がる税金を、そのまま直接取り立てることができるという点では、大変国策的だったと思います。
宮本常一『塩の道』講談社 1985 p77
明治期に日本を旅行したイザベラ・バードが、東北の山奥の人々は目が悪く、吹き出物が多いと記録している。これらは塩の不足にみられる症状と宮本は指摘する。

人間を含めた多くの動物は、生命を維持するために塩が必須である。しかし塩は日本では少ない例外を除いて海岸でしか取れない。この物資の取引でできた道が「塩の道」である。東北の山奥の記録は、この塩すら十分賄うことができない土地があったこと示している。

明治に国民国家が立ち上がり、塩を国家管理にしたことで、塩は手ごろな価格で津々浦々に行き渡るようになった。同時に、その税収は国家建設の原資となった。塩という戦略物資の流通を調整するには、国民国家の登場を待たねばならなかった、そういう話であり、全体最適の好例と言える。

このような話は明治期には枚挙にいとまがない。公共の仕事の醍醐味を感じる部分である。


参考リンク: amazon: 宮本常一「塩の道」

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