地元の市役所で番号札を握りしめて待機することがあります。
カウンターの後ろを覗くと、書類をやり取りをしている人もいれば、お茶を飲みながら談笑している人がいたりして。私は強く拳を握りしめる訳であります。
もちろん、そんな行政ばかりではありません。税収や国からの支援も人口減で細り続け、自治体が存続できなくなるやもと言われるありさまです。
本書は、そんな時代に自治体を経営するための方法論として「総合計画」を取り上げております。
■ 夏休みの計画と同じなんでしょうか?
速攻で宿題終わらせる計画を立てたのに、最終日近辺でヒーヒー言う話って、夏休みにはありがちであります。昔の総合計画も似たようなものでした。
元来は自治体を計画的に運営するため、1969年から法律で作成が義務づけられているのが「総合計画」であります。この計画、「基本構想」「基本計画」「実施計画」の3つから成りたっており、ざっくり言うと、「10年先のドリーム」「4〜5年くらいで実現したいこと」「1〜2年の具体的な計画」と、段階を追って内容が細かくなる仕様となっております。
しかし、計画を作ったら「それはそれ、これはこれ」と骨抜きにするのが、本邦の得意とするところ。結果、残るのは「総合計画」という名の冊子のみという有様に終わりました。
なぜそうなるのか。総合計画と政治や予算制度との関係をあまり考慮に入れてなかったのが原因ではなかろうかと、本書で分析されています。
例えば、計画で「ダムをつくろうず!」となっていたはずが、選挙で市長が変わったら「ダムいらね」と反故にされたりと、政治の変化に対応する仕掛けがありませんでした。また、自治体の予算は1年で立て直すので、「来年はここに道路つくろうず!」などと突然誰かが思いつけば、他の計画が簡単に延期になったりもします。
もうそんなもんさっさと止めたらどうよと思う訳ですが、法律で総合計画を立てろと定められており、その後21世紀に入ってもこの悲しい状況が続いておりました。
結果、戦意喪失した企画課の役人様は東京辺りのコンサルティング会社に仕事をぶん投げて「俺たちのドリーム・・w(総合計画)」という気の抜けた冊子を建立して倉庫にそっとしまいこみました。
行き当たりばったりの自治体運営爆誕であります。
■ ネオ総合計画の誕生
時は流れて21世紀。人口は減り続けるのに、支援が必要な高齢者は増加の一途。国も自治体も蔵に金がありません。国も総合計画の残念さを今更認めたのか、2011年には作成義務を止めました。
しかし、計画なき自治体は危ういものであります。ご利用は計画的にと言うではありませんか。
財政課から「今年はこんだけしか予算ないから頼むよ」程度の統制しか効かなかったとすれば、限りある資源と人員を戦略的に投下する動きなどは望むべくもありません。薄く広く全てにおいて駄目になっていく残念なありさまは至る所で見られる現象です。
う・・う、ギギギ、やっぱり総合計画ナノダ。
政治、予算、人事制度などときちんと連動させたトータルでネオな総合計画こそが、今般の自治体運営を良きものにするのだ。窮乏しつつ合った一部の自治体が運営を改めようと立ち上がり、本書の言わんとする「トータル・システム」に繋がっていきます。
中黒(・のこと)が素敵。
国が自治体に義務づけていた総合計画から一歩進んで、政治・予算・人事処遇等の行政の各仕組みと総合計画を連動させ、効果的な行政運営を計る試みが提唱されました。
政治的な側面では、選挙の周期に合わせて計画を見直す事で首長の方針も折り込まれます。予算面では、計画と予算を一対一で対応させ、計画に沿った施策実行を職員に叩き込みます。
人事処遇においても、計画や部課の目標達成に対応した評価の実施など、総合計画を核とした仕組みの構築が提案されました。また、計画づくりや実施における住民参加やNPOとの連携なども考慮に入れられているのもポイントであります。
本書では、このようなシステムを導入した自治体や、先進的な自治体運営の事例が紹介されており、その方面の改革を検討の方々には有用なものに仕上がっております。もちろん、こうした取り組みの結果はもう少し待たねばなりませんが。
■ 当たり前のことを馬鹿にしないでちゃんとやる(ABCの法則)
本書で言うトータル・システム化された自治体運営も、読んでいて新しいとか面白いといったものではありません。種々の困難を排して、あってしかるべきものをいかにうまく回すかという種類の話であります。
A 当たり前の事を B 馬鹿にしないで C ちゃんとやる。そんな世界ですよ。
コツコツめげずに地味で大変な活動を続け、理にかなった行政組織をつくろうという根気のいる仕事です。
そう考えると、こうした改革は行政だけの問題ではなく、意欲を萎えさせない市民の応援・支援も欠かせないのではないかと思うに至る訳であります。
自治体の営みは、有権者の合意の下で民衆から集めた資源(金、物資、人員、情報 etc…)を必要とするところに配分する営みであります。
配分にあたって、利益関係諸子が闘争して如何に自分の池に水を多く流し込むかという議論も可能な一方、協調し合ってその時々の必要に応じて「理詰め」で配分することもできるはずです。
資源が縮小して行く今般、どちらが大事かというのは自明であります。
また、自分に関わる以外のことは全て行政に丸投げしたいと考えても、そんな余裕は社会にありません。税金は行政サービスの対価ではなく、社会をよりよくする共助の一部であり、必要とあらば自らが動くという考えもより必要となるでしょう。
この新しい総合計画をうまく回すヒントというのは、行政の中だけでなく、実は有権者たる市民にこそ鍵があるのではないかと思う次第でありました。
玉村雅敏 著・監修 / (公財)日本生産性本部 編集
『総合計画の新潮流 ー自治体経営を支えるトータル・システムの構築』
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